Webディレクターに求められるスキルと知識は?

私は前職のITスタートアップにインターンとして入り、IT業界でのキャリアをスタートさせました。主に受託開発を少人数でやらなければいけなかったので、プログラミング、デザイン、ディレクション、プロジェクトマネジメント等あらゆる工程を経験してきた私だからこそわかる、『webディレクターに求められるスキルと知識は?』の質問に答えていこうと思います。

①:ディレクション能力

webディレクター(以下、ディレクター)は、その役職名の通り、ディレクション能力は必ず備えておかなければいけないスキルであり、このディレクション能力でディレクターの真価が決まります。
ディレクションという英語を日本語に訳すと方向、指示、指揮、命令といった意味があります。どれも似ているような、似てないような感じで捉えにくいと思いますが、実際の業務に照らしながら言い換えるとすると、これらはプロジェクトを成功させ最大効果を出すために「前へ進めていく能力」です。

受託案件のケースで考えてみます。

ディレクターは顧客との窓口であり、その下には、デザイナー、エンジニアの方が付きます。顧客の本質部分をヒアリングすることができなければ、間違った指示を出し、満足度の高いものを納品することができません。また何でもかんでも、はいはいと受けてしまっては、プロジェクトの遅れ、追加仕様による残業時間の増加等、デザイナー、エンジニアの負担が大きくなります。つまり、あらゆるステークホルダーとの接点になるのがディレクターなので、彼らを幸せにするも不幸にするもディレクターと言っても過言ではないのです。

顧客が満足するもの(例えば売上に繋がるもの)をつくるため、顧客ニーズを的確に捉え、それを最短で最大効果がでるように実現するため、デザイナー・エンジニアの確保、タスク・スケジュールのアサイン、ステータスを共有するためのマイルストーンの設置、顧客への途中経過報告などがディレクターの業務としてあります。

これらが滞りなく上手く回っていくこと、それがディレクション能力=「前へ進めていく能力」です。
これはディレクターにとって欠かすことのできない能力であり、逆に言い換えれば、ここさえ抑えればディレクターとして活躍する可能性が十分にあるということになります。

②:コミュニケーション能力

①では総論的なスキル・知識についてふれましたが、ここから各論としてより具体的なものについてみていきます。
ディレクターは社外・社内に関係なく、多くのステークホルダーと一緒にプロジェクトを進めます。プロジェクトが大きくなれば、それに比例するようにステークホルダーの数も増えていきます。
顧客の抱えている課題は何か、達成すべき目標に対するヒアリング、円滑にコミュニケーションを行うためのシステム(ルール)作り、チームのモチベーションを上げるための職場や雰囲気作り、一人ひとりの背景をベースにした会話(背景とは、年齢、社内・社外、職種、経験等)。上記には純粋に「話す、聞く」コミュニケーション以外も含んでいますが、それらもディレクターに求められるコミュニケーション能力です。

③:スケジューリング・工数算出能力

野球でよく耳にする言葉で、「今の打たれた責任はピッチャーではなく、キャッチャーの責任だ」があります。
結果的にピッチャーの失投によって打たれたかもしれませんが、キャッチャーが配球をリードして投げさせているので、キャッチャーの責任となるロジックです。
プロジェクトの遅れは様々な要因があったとしても、最終的には野球と同じようにディレクターの責任です。追加仕様や仕様自体の変更は、残念ながらよくあることで、結果、工数が当初より膨れ上がってしまうケース。また、受託開発案件を受けていると、たまにあるのが他のプロジェクトの障害対応です。この対応に追われ、今日本来行うはずだったタスクがほとんど手をつけられなくなり遅れが発生するケース。これらの影響を最小限に抑えるために、ディレクターはバッファーを見込んだスケジュール設定、工数算出、どこがクリティカルパスになるかを適正に判断したタスクアサイン。

これらはプロジェクトの成功を握る大きな鍵となるので、必ず身につけたいスキルです。

④:webに関わる技術知識

何度も触れますがwebディレクターは本当に多くの人とチームを組んでプロジェクトを進めていきます。そして、自分の専門分野とは違う人にも指示出しをしなればいけません。その際、わからないと言って相手に丸投げするようでは、良いディレクターとは言えません。
しかし、それら指示内容の具体的作業を自身でできるようになる必要はありません。従って、専門的な部分はそれぞれの専門家に任せ、キーポイントになる部分を的確に話し合い、指示出しできるようなレベルで大丈夫です。それぞれの専門家と共通言語となる知識を身につけることで、相手の信頼を勝ち取ることにもなります。

⑤:新しいトレンドや他業種の知識

世の中の新しいトレンドを的確に捉え、他業種の知識を備えていることがディレクターとどう関係あるのかと疑問に思うかもしれません。しかし、これが結構大事なのです。同じ業界にずっといることや偏った情報だけを取り入れていると、クリエイティビティが失われ、革新的なサービス・プロダクトを生み出すことはできません。実際に何かを生み出す訳ではないディレクターにも、クリエイティビティがなければ、顧客が満足する付加価値を提供することはできません。新しいトレンドや他業種に詳しいディレクターは、他のディレクターと差別化が図られ、相対的に活躍している人が多いため、やはり必要な知識と言えるでしょう。

いかがでしたでしょうか。ディレクターに求められる役割は本当に多岐に亘るため、ここで挙げたもの以外にも細かいものがまだまだあります。しかし、ここに挙げたスキルや知識はディレクターの本質部分と言えるものばかりです。どのプロジェクトに携わるとしても、ここのスキルや知識を身につけていれば、どんな大きな壁も越えていけるはずです。ここで学んだことを活かして、社内・社外に関わらず、誰からも必要とされるディレクターを目指してください。