私がグループホームで働いていたときのことです。
私の働いていたグループホームは1つの階に2つのユニットがありました。
2つのユニットの間には寮母室のような、スタッフの部屋があります。
その部屋はどっちのユニットにもつながっていて、入居者さんたちもその部屋を通れば隣のユニットに行くことができます。
グループホームは認知症で自宅で暮らすことが困難な人たちが暮らす場所です。
認知症の症状は、その人によって違います。
私が担当していたユニットには、高次脳障害のある入居者さん、Aさんが居ました。
普段はそれほど認知症の症状が出なくて、普通に会話ができたり、私たちの仕事も一緒にやってくれたりする方です。
ただ、一つの動作がずっと続いていると、そのことだけに集中してしまい、他の事にまったく意識が向かないことがあるので、散歩のときなど特に注意が必要なかたでした。
散歩でどのような注意が必要かと言うと、歩くことがずっと続いていると、歩いていること以外のことに意識が向かなくなるため、信号で止まることをせずどんどん歩き進んでいってしまうなどです。
なので、散歩のときは必ずとなりに一人介助者が付くようにしていました。
そんなAさん、その日は上機嫌でスタッフの部屋に来て話していました。
そのとき、2つのユニットを合わせると、スタッフは6人いましたし、スタッフの部屋にスタッフは3人いました。
Aさんが会話をしたあと、自分のユニットじゃない方のユニットにすっごく自然な足取りで歩いて行ったんですけど、あまりの自然さにスタッフだれもAさんに声をかけることはありませんでした。
隣のユニットへ行くこと自体は問題ないのですが、普通なら「となりに遊びに行くの?Aさんの部屋はこっちよ」くらい声をかけてみたと思います。
そして、皆が声をかけなかったその日に限って、隣のユニットの玄関が開いてたんです。
介護施設で働いている人ならわかると思いますが、普段ユニットの玄関に鍵がかかっていて、ロックを解除しないと開かない施設も多くあります。
私の働いていたグループホームもそうだったのですが、外に出てしまう人が居なかったら絶対に閉めておかないといけないと言うこともありません。
スタッフが多かったし、勝手に出て行く人の居ないユニットだったし、暑かったから玄関を開けて風邪通りよくしているところでした。
そして、Aさんは「あ、玄関があいている」と思ったら、玄関から出て行ってしまってどんどん歩いて行ってしまったんです。
勝手に出て行ってはいけないことが良く分かっている人だし、帰りたい願望があるわけではないけど、ただ玄関が開いていたから、何も考えずどんどん歩いて行ってしまったんです。
この時の教訓は、スタッフが多いと逆に油断してしまうことがあること、そして偶然が重なってびっくりするようなことが起きることです。
その後のAさんですが、施設の1階の出入り口を出た駐車場に居るところを警備員さんが見つけてくれ、電話がかかってきました。
電話がかかってきてはじめてAさんが居なくなっていることに気か付き、スタッフみんなでびっくりしました。
Aさんは「やぁ、ごめん!気が付いたら外に居たわぁ」と明るく帰ってきましたが、本当何も中って良かったなと言う出来事でした。
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