「薬剤師は手に職があるため転職しやすい」
とよく言われています。
私もそうでした。
複数社の面接を受けて、すべての会社から熱烈なラブコールを受けるという状況でした。
とはいえ
・転職に有利なのは若いうちだけじゃないか?
・転職において年齢が高くなると不利な扱いを受けるのではないか?
と、疑問に感じているかたも多いのではないかと思います。
そこで今回は薬剤師の転職において、年齢はどの程度影響するのか、という内容について解説していきたいと思います。
具体的には
・業種別薬剤師の転職と年齢
・年代別薬剤師の転職と年齢
「業種」と「年代」という2つの視点から、薬剤師の転職と年齢について詳しく解説していきたいと思います。
業種別薬剤師の転職と年齢
薬剤師の転職といっても様々な転職先があります。
調剤薬局、病院、ドラッグストア、企業など幅広い分野で活躍できるのが薬剤師という資格のメリットだと感じています。
それぞれの業種で転職の難易度が違っていて、おおむね
ドラッグストア<調剤薬局<病院<企業
の順番と考えてよいと思います。
①調剤薬局への転職と年齢の関係
調剤薬局の場合、現状年齢を理由に門前払いされることはほとんどありません。
正直私が現在働いている調剤薬局には以前70歳で正社員として働いていた薬剤師さんもいたそうです。
50代や60代で子育てがひと段落して、働きに出る女性薬剤師さんも大勢います。
ただし、気を付けなければいけないことは、ある程度以上の規模のあるチェーン調剤薬局に転職するケースです。
大手の調剤チェーンでは比較的若い世代の薬剤師が多く、仕事がハードで体力的にしんどくなるケースがあります。
また、大手の場合マニュアルがありそれまでの経験による自分ルールでの調剤では通用しない場合もあります。
新しい環境や、違ったやり方を習得していく柔軟な対応が求められることもあるので注意が必要です。
また、転職の際には40代以上ではそれまでの経験や実績が重要視されます。
管理薬剤師や、実習生の指導経験など求められる能力は転職先の企業によって違いますが、薬剤師として薬の知識のみならず、マネジメントに関する経験があると有利に転職できるようになります。
②病院への転職と薬剤師の年齢に関して
病院はスキルアップやキャリアアップを図る薬剤師にとって大変人気の転職先です。
ライバルは転職希望の薬剤師のみではなく、新卒の薬剤師も多くいます。
診療に関わることができる点、カルテを読める点、患者と密接に触れ合える点など、より薬剤師らしい仕事にやりがいを感じる薬剤師が多くいます。
ただし、病院と一口に言っても大規模な総合病院もあれば、中小の慢性期病院もあります。
大規模な総合病院だと年齢制限はより厳しくなり、中小の病院だと比較的制限は緩くなり、特に病院薬剤師の経験があれば年齢は不問というところも多くあります。
経験がどの程度あるかも重要視されます。
調剤未経験、調剤薬局の経験、病院薬剤師の経験によって大きく変わってきます。
総合病院の場合は規模にもよりますが、下記の年齢がおおよその制限の目安だと考えるようにしましょう。
・薬局での調剤経験あり:35歳まで
・調剤未経験:30歳まで
総合病院では全体的に仕事がハードであること、覚えることが多い、などの理由により比較的若い薬剤師が優遇される傾向にあります。
しかし、中小規模の病院では年齢の制限は大幅が広がります。
大規模な総合病院に比べて幅広く学べるというわけではありません。
そのため、慢性期病院や精神科病院、整形・リハビリテーション病院、中小病院などであると、新卒薬剤師からの応募が少なくなり、どうしても中途採用に頼ってしまうのです。
学ぶ意欲さえあれば年齢は不問の求人も多くあるため、年齢を理由に断られることは少なくなると思います。
③ドラッグストアへの転職と薬剤師の年齢について
調剤薬局同様ドラッグストアも多くの求人があります。
登録販売者制度により薬剤師がいなくても一般用医薬品が販売できるようになっているため、昔ほどの異常な好待遇は期待できませんが、年齢や経験等不問の求人が多く出回っています。
ただし、私も調剤併設のドラッグストアで働いた経験がありますが、レジ打ちや商品の在庫管理などの雑用が多いうえに、重労働でシフト制のため休みが不定休、勤務時間も朝早い時や、夜遅くまでの勤務などバラバラになるため、体力的にしんどいことが多かったです。
また、最近のドラッグストアはM&Aが盛んなため、親会社からの圧力によりノルマが厳しくなっているようです。
ポイントカード入会件数や、推奨販売品の売り上げノルマなど、調剤薬局や病院からの転職者にとってギャップを感じることも多いかと思います。
④薬剤師の企業への転職と年齢について
企業といっても薬剤師が転職先として検討する企業としては製薬会社、医薬品卸、治験受託会社などがあります。
製薬会社のMRや医薬品卸のMSは厳密には営業職であり、薬剤師免許がなければできないわけではなく、それほど有利に働くわけではありません。
営業職としての経験があるとか、適性があるかどうかで判断されることが多く、未経験の場合だと20代でないと採用は難しいでしょう。
それよりも、製薬会社や医薬品卸への転職であれば薬剤師免許や経験が生かせる仕事として、管理薬剤師やDI業務などがあります。
特に年齢制限があるわけではないため、定年後の2度のお務めとしても採用される可能性があります。
その他企業への就職先として、治験受託会社などがあります。日本の医薬品開発の現場は、薬の成分を開発する基礎研究の分野では世界的に進んでいるのですが、開発された医薬品を効果的に、安全に使用するためにはどうすればよいかといった、臨床研究の分野においては後れを取っています。
まだまだ人手不足の分野であるため治験受託会社の求人は豊富にあります。
調剤経験のみならず、コミニケション能力やPCスキルさえあれば30代のうちであれば転職は可能です。
薬剤師の年代別にみる転職の注意点
業種別に何歳くらいまで転職が可能かということについて解説してきました。
薬学部の乱立で薬剤師の数が増えすぎて、年齢の高い薬剤師は職に就けないのかと思われていましたが、2019年現在まだまだ人手不足で薬剤師が転職に困ることは少ないというのが現状です。
しかし、年代別に転職に対して注意すべき点が異なっています。
①20代の薬剤師の転職における注意点
薬剤師として学ぶべきことが多い年代です。
経験やスキル、知識の習得が可能な職場を選びましょう。
薬剤師という職は初任給が高いという特徴があります。
人手不足の小規模な調剤薬局では、経験の浅い薬剤師でも、人手欲しさに高額な年収で募集をしているところもあります。
しかし、目先の利益のみではなく、薬剤師としての将来を考えると、教育制度の確立された大手や、様々な経験を積むことができる総合病院で働きスキルアップすることをお勧めします。
②30代の薬剤師の転職
将来性のある職場を選ぶようにしましょう。
20代でしっかりとした知識や経験を得ていれば、その経験を必要としてくれる職場は多くあるはずです。
将来的に長く働けるか、キャリアプランがしっかりしているか、企業として成長しているかといった点で選ぶようにしましょう。
また、薬剤師としての経験が不足している、スキルアップをしたいので病院に転職したい、思い切って業種を変えて企業に転職したいという場合にはギリギリの年代です。
新しいことに挑戦したいと考えているなら早めに行動に移すべきです。
③40,50代の薬剤師
30代までの転職に比べると転職先が限定される傾向になります。
特に総合病院への転職であれば経験者でなければほぼ採用はされないと思われます。
それよりも、未経験の異業種ではなく20代、30代で培った経験をもとに転職するのがおすすめです。
40代以上である程度の経験があれば管理薬剤師や、学生実習の指導、部下の指導や職場全体を取りまとめるマネジメントなどの経験もあると思われます。
そういった経験を武器に転職すれば即戦力として重宝され好条件を引き出すことも可能です。
④60代の薬剤師
60代となると新しいことを習得するのが困難である、と判断されることが多くなります。
比較的求人の多い調剤薬局やドラッグストでも、未経験やブランクが長い場合は採用されにくくなる傾向があります。
また、若い薬剤師の多いところだと、職場の雰囲気になじめず人間関係に苦労するケースこともあります。
自分のペースでゆったりと働ける職場を選ぶためにも、実際に職場を見学させてもらい、自分に合っているかどうかを判断するようにしましょう。
薬剤師の転職と年齢についてまとめ
薬剤師の転職と年齢について「業種別」と「年齢別」という2つの切り口で解説してきました。
私が学生時代言われていた10年後薬剤師の3割が失業する、という状態ではなさそうで、調剤薬局やドラッグストア中心にまだまだ薬剤師の活躍の場は多くあるのが現状です。
地域によっては深刻な人手不足なところもまだまだ存在しています。
年齢に関係なく、今まで培ってきた経験や知識、新たな環境で学ぶ意欲さえあれば十分に転職や復職は可能です。
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