転職市場では、薬剤師に限らず大体1月から3月と9月あたりに新規求人が出てくる傾向があります。
その時期は、年度が切り替わることに際して、退職者の後任の補充や新規事業がスタートするなどの変化に対応するため、中途採用ニーズが高まるからです。
では、数が多い=転職のタイミングなのでしょうか?
答えはNoです。転職で考えておくべきタイミングについてのポイントはそれでだけではありません。
では、どのようなポイントを考えるべきか、大きく三つのポイントについて見ていきましょう。
転職会社に聞く、薬剤師の応募のタイミング
転職活動で一番理想的なのは行きたい会社に転職することですが、滑り止めなどを含めて何個か企業や病院をピックアップしていることが通常でしょう。
そういった場合、一番無難なのが、早めに希望順位の高い企業から合否結果を知ることです。
ほかの企業の合否結果が出るまで待ってくれる場合もありますが、その結果でどこかの企業をお断りするといった労力を使うくらいなら最初から行きたい企業から合否がわかるほうが最終面接前や最終結果前にお断りでき、気持ち的にも楽です。
基本的に同時に応募すると同時期に返事が返ってくるものと思いがちですが、残念ながら企業によってすぐに書類審査が終わる場所と終わらない場所があります。
それは企業(人事)の性格以外にも企業の忙しい時期もあります。
基本的に時期的に2~3月は新卒採用に会社が奔走していますので、その時期はあまり返信が期待できないかもしれません。
また、4月以降も半年間は新人教育に企業は手間を取られますので、9月以降、2月までが季節的に企業が中途採用の余裕があるといえるかもしれません。
なお、外資系企業になると4月はじまりではないですし、新卒採用をそもそもあまり行っていない企業についてはあまり当てはまりません。
中途採用については、ほかの応募者がどの段階(書類通過、最終面接待ちなど)まで行っているかによっても変わってきますので、転職支援会社(転職エージェント)に聞くのが一番です。
人事からの返信スピードや中途採用への熱意は直接人事や募集部門のメンバーとやり取りをしている転職エージェントの担当者が一番詳しいからです。
もし数社で迷っている場合は担当者に相談してみてください。
この会社は人気でなかなか書類審査が始まらない、人事が忙しくて手が回っていないから早めに出しておいたほうがいい、ここはすぐに合否結果が来るからほかの履歴書提出を優先してもいい、などアドバイスをもらえるでしょう。
ニュースで知る、応募のタイミング
大手の会社であれば、良くも悪くも新聞沙汰になりますし、会社のHPなどを見ていれば大きな会社の変化などを知ることができます。
例えば大きな事業改革をして大成功を収めていて事業拡大を明言している、大幅な組織編制で頭数が少ない状況になっている、という状況であれば人材を欲しているのは予想がつきますので、応募が通る確率が上がります。
逆に不祥事や社内トラブルが報告されていれば会社はそちらに手を取られていて採用プロセスが滞ってしまう場合が考えられるでしょう。
もちろん、その場合は応募者も減るので転職のタイミングともいえるかもしれませんが、その場合は面接でなぜこのタイミングでも応募をしたのか、という質問の答えは用意しておくべきでしょう。
まとまった休みをとれるタイミング
転職活動は計画的に行うのが重要です。
仕事をしながら隙間時間でどうにか情報収集を行って準備に慌ててしまうよりは落ち着いて情報収集期間を設けるのが無難でしょう。
ゴールデンウイークやシルバーウィーク、年末年始にゆっくり将来のことを考えながらの転職活動がおすすめです。
転職そのものの失敗を避けるのはもちろん、引継ぎを順調に行い、有給休暇を消化した後での円満な退職にも必要です。
また、特に引っ越しを伴う転職の場合、新しい新居で落ち着く時間も必要ですので、有給休暇消費などで計画的にまとまった休みを取ったほうが気持ち的にも楽です。
給与の話であれば、きっちりボーナスをもらったあとがいいですよね。では、その最適なタイミングはいつになるのでしょうか。
一般的にボーナス支給日の2~3週間後が最適といわれています。
それは大体ボーナスが出た後、職場はボーナスの使い道などで話題に上がりやすく、その中での退職の話は場合によっては心象を悪くしてしまうので、そのほとぼりが冷めたぐらいの方が良いからです。
基本的に退職するとなっても大幅にカットされることはベネッセコーポレーション事件があってからほぼないのですが、会社規定があったりしますのでそちらを事前に確認して、支給日後に退職日を設定するようにしましょう。
避けるべき転職のタイミング
一番避けるべきは、気になった募集が出てきて、慌てて転職活動を始めることです。
もちろん、中途採用の応募はいつ出るかわからないので出たときに動く臨機応変さは必要ですが、やみくもに動いてしまうと、よく見ると自分は調剤薬局で地域限定職を希望していたのに広域転勤の募集だった、転勤手当が厚いことで有名な会社だったけど今年から制度が変わっていた、といった思わぬ落とし穴にはまることもあります。
新規求人が数時間で消えることはほとんどありませんので、まずはいったん落ち着いて、情報収集をおこなうことが重要です。
ライフイベントを控えた女性の転職のタイミング・時期
次に気を付けるべきは、女性の避けるべき転職のタイミングです。
可能であれば出産予定日の1年以上前に転職を完了させるようにしましょう。
労働基準法では、出産より6週間前、双子以上の妊娠であれば14週間前には妊娠中の女性が申請した場合、会社側は必ず産休を与えなければなりません。
また、本人から申請がなくとも、出産後8週間は必ず休暇を取得する必要があります。
ある同業種から同業種への転職であれば半年程度あれば新しい職場に慣れることができるかもしれませんが、他業種からの転職は仕事を覚え、環境に慣れるのも時間がかかりますし、せっかく覚えても休み中に忘れてしまうかもしれないので会社にも迷惑が掛かりますし、休みの取得に本人も気まずさがあります。
産休について記載していましたが、育休に関しては産休と異なる部分があります。
法律的に入社が1年以内でも会社は産休を与えなければなりませんが、もし入社してから1年未満の従業員が育休を申し出たとき、育児介護休業法第6条に基づき、会社はそれを拒否することができます。
入社一年未満でも出産前後で休みは取れますが、場所によって待機児童問題などあれば出産後8週間での復帰が厳しく、せっかく転職できたのに、育休が取れないことで仕方なく退職することになったという人もいるので注意が必要です。
人手不足の調剤薬局やドラッグストアであれば取得可能かもしれませんが、企業や病院は少々厳しいかもしれません。
入社3年以内での転職は避けるべき?
一般的に石の上にも三年、ということわざから最低3年は同じ仕事に就くべきという考えがあります。
確かに、履歴書で見た際には3年以内でやめた仕事が羅列されていると今度の会社も同じくらいのペースですぐにやめてしまうのではないか?と思わせてしまう傾向がないとは言えません。
しかし、今すぐ辞めたいくらいに気持ちが追い詰められている、絶対に行きたい企業、やりたい仕事がある、というのであれば無理にその考えに縛られる必要はありません。
なお、おすすめしたいのは在職中の転職です。
気持ち的にも余裕が生まれますし、転職を繰り返すことで履歴書が長くなるより、間にブランクをはさむ方が面接官から質問を多くされる可能性があります。
なお、3年以内での転職になるとその理由をきちんと考えておくのが重要です。
それがたとえネガティブな理由であるにしろ、言い方、考え方を変えてポジティブなものにするように心がけましょう。
求人を見ていると同業種経験を3年以上、業界経験3年以上、といった目安を記載しているものがあります。この数字を見てあきらめる方もいますが、この数字はあくまでも目安です。たとえ求められている目安年数での就業経験がなくとも、それをカバーするだけの経験や能力があればその年数を超えていないという理由だけでお祈りされる可能性は少ないです。
もし行きたい会社の求人が出ているけどあと4か月待たないと提示されている目安経験年数に届かないからあきらめよう、もしくは4か月待とうというのはやめましょう。中途採用はタイミングが重要です。4か月待っている間に枠が埋まってしまう可能性もありますし、企業はあくまでも目安で考えていて、実際に考えている年数は区切りが悪いため長めに設定している場合もあります。
35歳以降の転職は難しい?
35歳以降になると転職ができないというのが言われていましたが、それは一昔前の通説となりそうです。
特に国家資格を持つ薬剤師免許取得者はこれに当てはまりません。
なお、未経験での転職はさすがに厳しくなってくる年齢ではあります。
もしやりたい仕事、チャレンジしてみたい仕事があれば35歳までに挑戦してみるのが無難でしょう。なにしろ35歳以上になってくるとある程度役職がついてくる年齢です。
未経験、となるとそこから1から勉強となると年齢的な壁もありますし、職場が若手ばかりであると、年下の上司でも大丈夫か?といった企業側の不安が大きくなります。
35歳以降でもやりたいことがあれば絶対に転職はできない、とは言いませんが、覚悟は必要といえるかもしれません。
転職のタイミング・時期は自身の状況に合わせることが重要
転職活動ははっきりとしたスタート時期と終わりの時期がわからないので、転職活動開始や応募をするタイミングというのはなかなか設定しづらいものです。
ですが、いずれにおいても慌てて初めたりするとあとから不具合が出てきますので、まずは冷静に情報収集を行える環境を整えましょう。
薬剤師の転職市場は売り手有利な状況が続いているため、何月頃に求人が増えるからその時期が良い、ということはなく、1年中転職のチャンスに溢れています。
ただ、そのような中でもあなにマッチする求人がいつ出てくるかはわからないため、しっかり情報サーチを行うためにも転職サイト等に登録し、いつでも動き出せるように準備だけは前もって行っておきましょう。