グラフィックデザイナーとして働き始めたものの自分には合っていない、そう感じる人は多いと思いようで、異業種への転職をされる方も増えています。そこで今回は、グラフィックデザイナーの経験しかない人が他の業種へ転職出来るのかを解説します。
グラフィックデザイナーをやめる理由
では、まず何故グラフィックデザイナーをやめて他の職種へ転職しようと考える人が多いのか見ていきましょう。
労働時間の割に年収が低い
決して年収そのものが低いわけでは無いのですが、求められるスキル・労働時間の割に年収が低い方が多い印象です。
転職サイトの『DODA』が2017年にまとめたデータですが、グラフィックデザイナーの平均年収は332万円だったそうです。クリエイティブ職種の平均年収は約380万円程度と言われているので、クリエイティブ職種の中でもグラフィックデザイナーの年収が低いのが分かります。
しかし、企業によって大きく変動する職種でもあり『10~999人』の小中規模の企業では大きな差はありませんが『1000人以上』の規模、いわゆる大手企業になれば年収額は一気に大きくなります。中には年収1000万円以上の人もいるので、それが原因の一つでもあります。このように、グラフィックデザイナーが年収をアップさせるには、大手企業への転職が必須と言えます。
残業時間が長い
グラフィックデザイナーの平均残業時間は月間43時間とされています。ただし、実態としてはこの倍近くあるのが現実です。
この残業時間でも、全職種95種の中でも7番目という長さです。しかも、残業時間は1日1時間や3日に1回などの固定ではなく、一番忙しい納期前や修正依頼が入った時に集中して発生します。残業代も発生しない場合もあるので、これで嫌になる人が多いです。
自分がデザインしたいものが作れるわけではない
学校などでは自分のセンスに自信があったものの、実際に働いてみると全然採用されない、文句ばっかり言われる、など自信を喪失していきます。しかし、それはセンスがないのではなく、自分の作風に合った企業の広告じゃなかった場合も多いので難しいところですね。
これは、アサインするディレクターの問題でもあります。ただ、いずれにせよ、人が求めるもの、効果の高いものを追及していかなければならないため、好きなものを作りたいという方にとってはあまり面白いと思える仕事ではなかったというケースもあります。
これは、クライアント側にも事情がありますので、クライアントが悪いわけではありません。
グラフィックデザイナーの他業種への転職
では、どのような業種であれば転職出来るのか見ていきましょう。ここでは一部を取り上げるので、他にも選択肢は沢山ありますよ。
インハウスデザイナーへの転職
インハウスデザイナーとは、自社製品・サービスなどのデザインを制作するデザイナーのことです。そのため、勤務しているのはデザイン会社ではなく一般企業の場合がほとんどなので、職場環境がまったく違います。
社内での仕事依頼がメインとなっているので、急なスケジュール変更が少なく残業も多くありません。インハウスデザイナーを募集している企業は大手であることが多く、全体的に好待遇で安定しているのが最大のメリットです。制作会社のグラフィックデザイナーと比べると待遇という面だけで見れば大きな差があることもあります。
グラフィックデザイナーとしての経験をインハウスデザイナーとして活かすことは充分可能です。しかし、ただでさえ競争率が高いデザイナー業界の中でも大手企業ということもあって狭き門となっています。受かれば最高の職場環境で働けることでしょう。
ただし、難点としては、その企業の商品に関するデザイン業務ばかりになるので、人によっては飽きて辞めてしまう方も少なくありません。
営業やディレクター、マーケティング等違う職種へと転職
グラフィックデザイナーからデザイナーとは全く異なる営業などの職種へと転職されるケースもあります。実はデザインスキルというのは、どの職種でも生かすことができるのです。
例えば営業と言うと、一見泥臭い仕事のように感じますが、とてもクリエイティブな仕事なのです。顧客にヒアリングを行い、顧客が求めるものを提案書という形にし、プレゼンを行い、そして受注したら完成物へと仕上げていく仕事です。
この過程において、デザインスキルはとても活かされます。
提案書を作成する際は、お客様にわかりやすく説明するために図解することもあります。
印象をよくするための色使いやテキスト・図などの配置もよく考える必要があります。
また、受注後に各人員に仕事をアサインする必要がありますが、内容を伝える際も、デザイナーとして培ったまとめる能力はとても活かせるでしょう。
このように、あなたが思っている以上にデザインスキルというのは、違う職種になっても活かせるものなのです。もし違う職種・違う業種へと転職される場合は、各職種の仕事内容について調べ、デザインスキルがどこで活かせそうか、アピールできるように準備しておくと良いでしょう。
ファッションデザイナーへの転職
ファッションデザイナーのイメージとしては、『洋服のデザインをする』というのが主でしょう。洋服全体のイメージから、袖や裾の柄の雰囲気、折り目などのディテールをつめていく感じです。
その一方で、生地や柄・色について仕事としてやっていきたい人もいます。これもファッションデザイナーの仕事と思われがちですが、『テキスタイルデザイナー』というれっきとした職種があるのです。
まずは、ファッションデザイナーへの転職を考えている人は、『洋服のイメージを創造するファッションデザイナー志望』なのか、『生地の柄や色などを創造するテキスタイルデザイナー志望』なのか整理しましょう。
仕事の内容や雰囲気などは、グラフィックデザイナーとは違う分野です。しかし、グラフィックデザイナーとしての経験を活かすことは可能です。デザイン力というのは経験によって大きく成長していきます。学ぶことも多いですが、戦力として期待されることも多いでしょう。
まとめ
グラフィックデザイナーから他業種への転職自体は可能です。経験を活かすのであれば同じデザイナー職に就くのが妥当と言えるでしょう。デザイン会社でも働く環境が良いところはありますので、労働環境だけが問題なのであれば、そうした求人を探してみても良いでしょう。また、インハウスデザイナーなどであれば好待遇も望めますので、気になったら是非エントリーしてみてください。
その他営業職などの全く違う職種へと転職される方もたくさんいます。
こうした違う職種を経験することで、最終的にまたデザイナーをやる際にも、他の人とは差別化できるため、別のキャリアが無駄になるということはありません。
様々な選択肢がありますので、もしデザイナーを辞めたいなとお考えの方がいましたら、一度自身のキャリアについて振り返ってみる良い機会が訪れたと考えてみましょう。