制御・組込系エンジニアの職務経歴書の書き方

コーディングをしたり、開発をしたり、技術について調べたりするのは好きなのに、職務経歴書を作成するとなるとちょっと気が重い人もいるかしれません。

なかなか普段の仕事で自分の業務の棚卸をしないので、少しめんどくさいように感じるかもしれませんが、1-2時間程度時間をとれば十分作成できます。

今回は制御・組込系エンジニアの方向けに職務経歴書の書き方をご案内していきます。

職務経歴書は満点ではなく、合格点を目指す

普段文章を書いていない方の場合、職務経歴書になにを書けばいいのか悩む方も多いと思います。

書類選考はたしかに職務経歴書を元に判断されるのですが、採用担当に「会ってみよう」と思ってもらえれば合格です。

つまり、満点の書類ではなく、70~80点(合格点)が取れればよいことになります。その合格点を取るためのポイントを理解しておけば、職務経歴書に書く内容も自ずと見えてきます。

もちろんパーフェクトな職務経歴書を仕上げていくのは悪いことではありませんが、採用判断においては面接のほうが比重が大きいのが実情です。

そのため、書類は面接官が見ているポイントを押さえて作成をしていきましょう。

面接官が見ている3つのポイント

採用担当や面接担当が1人の書類に関しての確認時間は5-10分程度、という方がほとんどです。

つまり、面接官が重点的にみるポイントについてしっかりと記載をしておけば、職務経歴書としては合格点が取れると考えてください。ここでは面接官が書類から読み取っている3つのポイントについて解説していきます。

1、技術が合致しているかどうか

制御・組込系エンジニアの方であれば、面接官が一番見たいのがこのポイントです。

具体的には、どのような言語、開発環境で開発をしていたのか、どの程度の開発規模の案件で経験があるのか、開発工程はどこを担当していたのか、その開発にどのくらいの期間関わっていて、どのような業務知識・業界知識を保有しているのかなどの観点から、エンジニアとしての技術力や技術レベルを確認しています。

主には職務経歴欄やテクニカルスキルの欄で、この技術力を判断されています。

2、ポテンシャルが感じられるかどうか

採用要件と完全合致していれば即戦力としてみなされますが、技術分野が違っても、ポテンシャルを感じられれば採用になるケースはあります。

技術分野が違う場合、似たような経験があるのか、どのような意識でプロジェクトに参画しているのか、新しい技術を習得していけるだけの素養や意欲はあるのかどうかが確認されます。

3、志向性・人柄はどのような人か

面接官は上記の技術力・ポテンシャルとともに、書類から「志向性」や「人柄」を読み解き、会ってみるかどうか判断をしています。たとえば会社としては「マネジメント」を求めている採用で、書類に「マネジメントには興味がなく技術者として一生やり遂げたい」と記載してあれば、双方不一致として、お見送りになることがあります。

また、仕事において「言われたことをただやった」人と「問題を自ら気づいて仕事を自分で取りに行った」人であれば、後者を採用したいと思われます。エンジニアとして仕事に対する思いや志向性、仕事に対する考え方なども書類上から読み取られているものです。

これらは職務経歴欄の特記事項や自己PRなどの文章から判断されています。

職務経歴書で記載する5つの項目

面接官がどこを意識して確認しているのかを理解いただけたと思います。

次に職務経歴書の記載する内容について一つずつ確認をしていきます。

特に絶対に記載をしないといけない項目があるわけではありませんが、下記の項目を抑えておくとよいでしょう。

記載にあたっては第三者である面接官に「伝わる」ことを意識しながら作成しましょう。

職務概要

職務経歴書の冒頭に、3-5行程度でこれまでの自分の経歴を要約して記載をします。

■職務概要記入例
現職に入社後、一貫して携帯電話の新機種開発に携わってきました。経験のある分野はカメラ・画像再生・音楽再生・バーコードリーダーのソフトウェア開発です。開発工程としては詳細設計からテストまで一連の経験があります。また2017年からは開発におけるサブリーダーとしてスケジュール管理・品質管理・メンバー指導などを担当しています。

職務経歴

これまで参画したプロジェクトについて記載をします。ここが職務経歴書において最も重要な箇所になりますので、時間をかけて記載をしましょう。実務経験のある内容について、①プロジェクトの時期・期間②プロジェクトの概要・内容③担当工程/開発規模④開発環境、使用言語⑤自分なりの工夫や取組み、この5点を記載していきます。

①プロジェクトの時期・期間・・・

参画したプロジェクトの時期と期間を記載します。基本的にはプロジェクトすべてを記載しますが、参画したプロジェクト数が多い場合には①プロジェクト時期・期間②概要・内容のみ記載をしましょう。プロジェクト記載の期間にブランクがあると休職などの確認が入ることもありますので、基本的には期間が空かないように記載をしたほうがよいとされています。

②プロジェクトの概要・内容・・・

参画したプロジェクトがどんなものだったのかを記載します。基本的には【業界(通信会社、自動車メーカー、家電メーカーなど)】+【商材・最終商品(デジタルカメラ、携帯電話、車載用など)】を記載するとよいでしょう。
常駐先や取引先などは機密事項で開示できない場合もあるかと思いますが、制御系・組込系エンジニアは、どのメーカーのどの種類の開発をどの程度経験しているのかなど、所属会社・常駐先の会社によって開発のレベル感が変わる職種となります。できる限り第三者である面接官にその開発種類や規模・内容が伝わるように意識して記載をするとよいでしょう。

③担当工程/開発規模・・・

参画したプロジェクトの中で担当した工程を記載しましょう。同じプロジェクトで複数の工程を担当している場合には、それぞれの期間をおおよそでよいので記載します。
開発規模については全体の開発人数もしくはそのプロジェクトの参画人数を記載します。

④開発環境、使用言語・・・

プロジェクトで使用したプログラミング言語やハードウェア、開発環境、OS、ツールや計測機器などにについて記載をします。技術力をしっかり確認したい面接官が多いため、このあたりの技術範囲は丁寧に記載をしておくとよいでしょう。

⑤自分なりの工夫や取組み・・・

同じプロジェクトには通常数名~数十人が開発メンバーとしてかかわっていることがあると思います。担当している工程や扱っている技術も同じ場合が多いですが、その中でもあなただからこそ気づいたことや工夫したことがあると思います。ここは、自分なりにプロジェクトの中で工夫したこと、苦労したことなどを記載していきましょう。何か意識したことやリーダーから褒められたこと、うまくいったことなどを思い出して記載をしましょう。入社直後のプロジェクトや1-2か月程度のプロジェクトであればアピールできるものがないかもしれません。その時は特に記載をしなくても問題ありません。
特に面接官にアピールしたいプロジェクトや顧客から評価を得たプロジェクトなどはぜひ力を入れて記載しましょう。

■職務経歴記入例
2015年1月~2015年8月(8か月)/カーナビゲーション製品
大手メーカ-に常駐し新製品におけるプロジェクトに参画。主に製品の詳細設計と開発工程を担当。

 

【担当】

・ソフトウェア設計(詳細設計〜デバック)
・アプリケーション開発
(検出検索(記録・検索)、音声記録、再生設計)

【取り組み】

・開発においては業務効率が悪かったことからデータ統合の実施をリーダーに提案、採用が決定。これによりデータの一元管理が実現し、業務工数削減につながった。

【OS】

Windows

 

【言語】

C言語、C++

全8名

プログラマ

 

【担当】
詳細設計、

開発

技術

技術力について、経験しているもの・理解しているものを一覧にしてまとめます。制御・組込系エンジニアの場合、所属会社により参画できるプロジェクトの規模や開発に携われる製品などが限定されてしまいます。ただ、理解している技術の内容からポテンシャルを判断していただける可能性がありますので、技術欄についてはできるだけ細かく記載をしておくとよいでしょう。

■スキル記入例
OS μItron 2年 設計書を元に環境構築が可能
Linux(RedHat) 2年 設計書を元に環境構築が可能
言語 VB.NET 4カ月 簡単なプログラミングが可能
C++ 2年6か月 状況に応じて最適なコードが書ける
C言語 1年2カ月 状況に応じて最適なコードが書ける

得意分野・活かせる業務・資格

まとめて自分自身の得意分野や活かせる業務・内容について、また保有資格などについて記載をします。必須ではありませんが、ここもまとめて記載があると面接官が書類から技術を読み取りやすくなるため、記載することをオススメします。自分の実務経験を振り返り、他の人と比較しても得意だと言える分野や業務理解などがあれば記載をしましょう。
制御・組込系エンジニアは海外製品や技術マニュアルなど、英語での文献確認をする機会もありますのでTOEICなどの資格や英語使用能力などについても触れておくとよいでしょう。大手メーカーなどに挑戦する場合は記載があったほうがプラスとなります。

■得意分野・資格記入例
◇活かせる業務・得意分野
・ デジタルカメラのソフトウェア開発
・ 監視カメラのネットワークシステムのソフトウェア開発
・ μItron、Linuxソフト設計
・C、C++、VC++による組込によるシステムの設計、コーディング
◇資格
・基本情報処理技術者試験
・ソフトウェア開発技術者試験
・TOEICテスト730点
(英語力/技術マニュアル・論文の読解が可能レベル)

自己PR

自分の強みやアピールになりそうなことを記載しましょう。何を記載すればよいか悩む場合は、大きく2つに分けて記載をすると書きやすいと思います。1つ目は技術的なことについて。たとえば技術でのこだわり、プログラミングや技術分野について記載をします。特定の製品や技術範囲に強みがある場合、それらについてどの程度知見があるのか、どの程度まで理解をしているのかを記載するとよいでしょう。

2つ目は仕事の仕方について自分なりに意識していることを書きます。

仕事を進める上で重要視していることはその人によって異なりますので、例えばスピードを意識した開発をすること、最新技術に敏感であること、チームワークを重視しているなど、自分で大事にしていることを書いてみましょう。

もしくは現在興味のある分野・製品などについて記載をしてみてもよいでしょう。

また実務経験が5年以下など短い場合で、大学院などで勉強した分野が制御・組込系に関連する場合には、研究分野や論文について自己PRで記載をしてもよいでしょう。学会での発表内容や論文内容を添付したり、web上に残っている場合には参照URLを記載してみましょう。

■自己PR記入例

これまで入社してから一貫して大手自動車メーカーの車載用デバイスの開発を行ってきました。特にモデルベース開発の解析などは長期間のプロジェクトに参画していてこともあり、知見が深いと考えております。現在は次世代製品の開発に携わっています。

また、仕事においては常に業務効率化を意識して業務を進めるようにしています。チーム内で同様の作業が繰り返し行われる際には、VBAなどでツールを作成し自動化をするなど、作業効率向上に向けて工夫をするようにしています。

職務経歴書での作成で注意したいこと

最後に職務経歴書の作成において、注意したいことをまとめておきます。ここからは、どの職種も共通の内容となります。
当たり前のことも多いと思いますが、些細なことで減点になるともったいないので、ぜひ意識してくださいね。

用紙のサイズはA4縦方向

基本的なことですが職務経歴書のサイズはA4の縦方向がオススメです。

たまにB5サイズやA4の横方向で2分割されている書類を見かけます。

面接官は何百人の書類をチェックしますので、用紙のサイズや見方が異なるとストレスとなり、それだけで印象は悪くなります。

絶対という決まりはないのですが、一般的にはこのサイズ、この記載方向となります。

日付は新しい日付で作成を

書類の右上に日付を入れますが、転職活動が長引くと日付が古くなってくるものです。

古い日付が1カ月以内くらいのものであれば許容範囲ですが、時どき、3か月前、6か月前の日付の職務経歴書で提出している求職者もいます。

日付が古いと、面接官から「そんなに長く活動をしていて、決まらない人なのか」と思われるリスクが高く、またビジネスでの気配りがないと判断される可能性があります。

Wordで作成をするのであれば、メニューバーの【挿入】→【日付と時刻】から「(日付を)自動的に更新する」という設定にすると新しい日付が自動的に更新されますので、作成時に設定をしておくとよいでしょう。

誤字脱字には注意

当たり前のことですが、提出した書類に誤字脱字がないかチェックをしましょう。

1,2箇所であれば大目にみてくれる面接官もいますが、何か所も間違っているとやはり気になるものです。

「書類でこんなにミスがあるのであれば、きっと仕事でもミスが多い人だろう」という印象を与えてしまいます。

また、SEが特に注意したいのは言語やフレームワークなどの技術に関するスペルミスです。

これらの技術に関してスペルミスがあると、技術に対しての知見が浅い、技術に対する興味が低いとみなされることが多いため、英文字(JavaやC#など)のスペルチェックはしっかり行いましょう。

枚数は常識の範囲内で

職務経歴書の枚数は特に制限がありません。

社会人経験が1年以内で経験があまりない人であれば1枚でも十分かもしれません。

では10年ほど経験がある人は10枚書けばよいのかというと、少し長い印象を面接官から持たれます。

面接官も隅から隅まで書類をチェックするわけではありませんので、特に主だった経験やアピールできる内容を中心に、3枚前後にまとめておくのがよいでしょう。

志望動機は記載不要

志望動機を職務経歴書に記載するかどうか、悩まれる方も多いと思いますが、志望動機は不要です。

記載していけないわけではありませんが、記載をすると他の企業に転用できなくなってしまったり、他企業に間違って提出してしまったりとミスも想定されます。

志望動機は面接で確認するため、書類選考の段階では面接官は気にしていないことがほとんどです。ただし全く違う業界・仕事内容にチャレンジする際にはその業界・仕事を挑戦したいと考えた理由を記載してもよいでしょう。

いかがでしたでしょうか。職務経歴書をつくるのは面倒くさい、と思われる方も多いかもしれませんが、冒頭で記載をしたように、合格点であれば書類は通過します。集中すれば1-2時間程度で完成しますので、ぜひ頑張って記載してみてくださいね!

なお、職務経歴書作成に際してエンジニアの転職支援が豊富なエージェントに相談することでブラッシュアップが可能です。

やはり書類選考では応募書類の出来で大きく左右されるので心配な方はエージェントにも相談してみると良いでしょう。